Starfield 航星日誌

スターフィールドのプレイ日誌です。ネタばれあり。あしからず。

ニューアトランティス - アルファ・ケンタウリ A星系 ジェミソン Part. 4

航星日誌 23307.1

コンステレーションの一員となった私は、リーダーのサラ・モーガンとともに更なるアーティファクト発見のために出発した。コロニー連合政府MASTの外郭軍事部隊ヴァンガードには、各地の情報が集まっている。モーガンの勧めに従い、調査はここから始める。

 

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MASTとは、コロニー連合(UC)の統治機構であり、政治体制そのものを表す言葉でもある。軍事、行政、科学の三位一体 (Military, Administrative and Scientific Triumvirate) の略称だ。未知の領域を探査するための科学、外敵から防衛するための軍事、植民地を運営するための行政。この3要素はいずれも宇宙のフロンティアにあっては欠くことのできないものだと言える。

 

しかし、すでに無数の惑星が開拓され、コロニー連合が人類圏最大の統治機構として君臨しているいま、はたしてMASTが旧来の民主主義に代わるものとして最適なのか、疑問も残る。ここニューアトランティスの繁栄を見れば、すでにアルファ・ケンタウリ星系がフロンティアと言えるような場所ではないことは明らかだ。地球時代に人々が勝ち取った普遍的な権利である人権を故意に隠蔽し、「市民権とは自ら勝ち取るもの」というスタンスで市民一人ひとりに努力を強いる政治体制は、勝ち取る力のない者にとっては厳しい。弱き者は生きてはいけないというフロンティアスピリッツの負の側面が、この統治機構には組み込まれている。

 

これから向かうヴァンガードは、まさにその歪みを体現している機関のひとつだ。私兵集団であるヴァンガードに籍を置き、UCのために宇宙で危険な任務をこなした者にのみ、UCは市民権を与える。そんな世界に私は身を置いているのだ。

 

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ヴァンガードの登録センターはロッジのすぐ近く、MAST本部の中にある。モーガンを連れた私は少し寄り道をして、植物学者からの依頼で市内各地の樹木調査をこなしたり、貧困地区であるウェルの見学をしたりしてから、登録センターへと向かった。植物学者によると、ニューアトランティスの樹木が奇妙な電磁波を出すようになっているとか。植生が惑星環境に適応できていないのだろうか? 

 

 

都市に秘められた謎を嗅ぎまわりつつ、ヴァンガード登録センターに入ると、トゥアラという軍の管理官がモーガンを出迎えた。彼はモーガンを昔から知っていて、いつも勧誘しているようだ。よそよそしかった彼女の表情がトゥアラの前ではほころび、急にベラベラとしゃべるようになった。ははあ。彼女はこういうタイプなんだな。別にトゥアラと特別な関係があるとかではない。彼女は本質的に人づきあいが苦手で、よく喋る相手にだけ気を許す内向的な性格なのだ。わかる。自分もそうだ。こういうタイプは得てして、自分の性格には問題があるが思考は明晰だと信じている。だから、引っ込み事案な自分の性格を克服したくてリーダーに立候補したりする。……書いていて嫌になってきた。

 

トゥアラの情報で、火星のシドニアにアーティファクトを保有していると思しき人物がいるという。いや、実のところディティールは覚えていないのだが、とにかく太陽系……地球が世界の中心ではなくなっているのだから、ソル星系と呼ぶべきか……の火星に行かねばならないということはわかった。ソルはアルファ・ケンタウリの目と鼻の先だ。

 

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行き先が定まったついでに、軽い気持ちでヴァンガードに入隊をしてみることにした。宇宙を移動する間にヴァンガードのミッションをこなせば、何かと便利かと思ったのだ。トゥアラに改めて入隊方法を訊くと、地下にあるオリエンテーションホールで登録とテストをすればいいという。

 

軽い気持ちで地下に降りると、そこにあったのはUCの戦争博物館だった。

 

 

おそらくヴァンガードの入隊希望者に、彼らの存在意義を浸透させるために展示しているのだろう。22世紀半ばの地球崩壊から、UCの結成と分離主義者「自由恒星同盟」との戦争、宗教集団である「ヴァルーンの家」の起こした叛乱を中心に、その経緯がトピックごとにまとめられている。特にニーラ、ロンデ二オンといった惑星での凄惨な戦いと、禁止された機動兵器メックや生物兵器UCゼノウェポンの存在には目を見張る。展示の最後は、自由恒星同盟との和平のため、過剰な軍事行為を働いた自軍の将軍3名を極刑にした、という殊更後味の悪いトピックでまとめられていた。

 

この一連の展示で改めて、私が生きている銀河人類圏の歴史が俯瞰できた。しかし、私のヴァンガードへの士気は上がるどころかむしろ下がってしまった。軍事を統治体制の3頂点のひとつに置くが故に、UCは戦争をいとわない。軍による虐殺などの逸脱行為は目に余る。UCの統治体制に対する疑念がますます膨らんでしまった。

 

ヴァンガードはUCの中心ではなく、あくまで外縁の部隊だ。武装した民間人の集まりなので、ある種気軽さもある。どこかの企業に登録したり、ましてや海賊に籍を置くよりは、ドライかつ自由に活動ができるのでは……と思ったのだが、どうしても背後のUCの存在が気になってしまう。

 

とりあえずだが、私はコンステレーションのメンバーなのだ。あまり別の組織に肩入れせずに、自分でできる調査を地道にしたほうが却って安全、いや健全ではないのか。そう思って、私は踵を返し地上へと向かった。